<甘味料の話・2>

菓子やアイスクリーム、清涼飲料水、調味料に至るまで、味を調整するために「甘味料」が使われています。今回は「非糖質系」と言われる甘味料、「合成甘味料」に注目していきます。

まず、甘味料は「糖質系」と「非糖質系」に分けられます。

糖質系には、糖質に含まれる単糖(ブドウ糖、果糖など)、二糖(砂糖、乳糖など)、オリゴ糖(ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖など)、糖アルコール(ソルビトール、還元水飴、キシリトール、エリスリトールなど)などがあります。私たちが日常で使う砂糖のほか、はちみつ、メープルシロップなどはここに分類されます。

一方、糖質に含まれない非糖質系には、天然素材であるステビアや甘草、人工的に合成されたサッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK(カリウム)、スクラロース、ネオテーム、アドバンテームがあり、これらは日本の食品衛生法において「食品添加物」の扱いになります。

甘味料の種類のイラスト

「人工甘味料」は、糖質系の糖アルコールと非糖質系の合成甘味料のことですが、「カロリーオフ」や「カロリーゼロ」と表示されている商品によく使用されているのは合成甘味料です。一般的には、この合成甘味料を人工甘味料ととらえる人が多いのですが、ここではしっかり分けて、「合成甘味料」を使うことによるメリット、デメリットについて詳しく見ていきます。

合成甘味料のメリット

甘味度が高い。アスパルテームは砂糖の200倍、アセスルファムKも200倍、スクラロースは600倍、アドバンテームはなんと20000~40000倍もあるため、少量で甘味をつけられる
血糖値が上昇せず、インスリンの分泌を促進しない
エネルギーにならない、またはなりにくく太りにくい
水に溶けやすく、熱に安定で加工しやすい
虫歯にならない

合成甘味料のデメリット

血糖値が上がらないため、食べた満足感が得られない
クッキーなど焼き菓子の焼き色がつかない

健康リスクがあるのか

このように甘味度が非常に高い合成甘味料は「ノンシュガー」や「シュガーレス」などと商品に表記され、「ダイエットに効果的」とされる反面、「健康リスクがあるのではないか」「結果として太るのではないか」と危惧する声もあります。なぜそう言われるのか、深掘りしていきます。

安全性
安全性に関しては、「食品添加物」として認可されていることから、通常使用する量であれば、体に害にならないとされています。

糖尿病リスク
合成甘味料を含む人工甘味料使用の飲料を飲んでいる人の方が、飲まない人よりも糖尿病発症のリスクが1.7倍高いといった報告があります。しかし、そもそも人工甘味料使用の飲料をよく飲む人は、甘い飲み物や食べ物を好み、砂糖やブドウ糖果糖入りの飲料もよく飲んでいる可能性があります。つまり、これだけでは人工甘味料が糖尿病の発症を増加させるとは結論づけにくいところがあります。

ただ最近では、味覚を感じる細胞が腸管にも存在し、腸管で甘味を感じると小腸から分泌されるインクレチンというホルモンがインスリン分泌を促進し、小腸での糖の吸収が促進されることが報告され、糖代謝に影響する可能性が示されました。

ノンシュガーのイラスト

腸内環境の悪化
合成甘味料が腸内細菌の常在菌を病原菌に変えてしまう可能性があるといった報告や、腸内細菌叢を変化させ、耐糖能異常を引き起こすといった報告があります。しかし、実験で使用される合成甘味料は最大限の量であるため、通常使用する範囲であれば、問題にならないとも考えられます。

血糖値が上がらないため太る
合成甘味料を含む人工甘味料では血糖値が上がらず、満足感を得られないため、たくさん食べたり飲んだりしてしまい、結果として太ると言われています。

血糖値に関しては、菓子類であれば甘味料以外の糖質を含むものが多いため、人工甘味料を使用したとしても血糖値が全く上昇しないというケースはほぼないと思われます。飲料においては、甘味料以外の糖質が含まれないものが多いため、血糖値が上がらないケースも多いでしょう。とはいえ、飲み物を飲む本来の目的は水分摂取であり、血糖値上昇ではありません。要するに、「人工甘味料を使っていればカロリーオフ」という安心感から、摂取量が増えてしまうのではないかと思います。

このように合成甘味料のメリット、デメリットを考えると、「極端に避けることはないものの、大量摂取はしない」のが無難だと思います。それ以前に甘味の強い食べ物や飲み物に依存しない食習慣にすることを推奨していますし、合成甘味料だけが原因で健康リスクがあるわけではないということも加えておきます。

次回は、糖質系の人工甘味料の糖アルコールや新しい糖類を取り上げ、甘味料の上手な使用方法などを解説します。

管理栄養士・今井久美